土井祥平の書いた記事

フヨメさま

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ギター担当 土井祥平

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From: ●● ●● <●●●●@●●●●.com>
Sent: Tuesday, September 16, 2025 3:16 AM
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Subject: フヨメさま

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高2の秋ごろ、俺、A、B、Cの四人で肝試しに行った。

俺らの地元には、●●センターというバブル期のレジャー施設の廃墟があって、「アトラクションのお化け屋敷に本当にお化けが住み着いてしまった」とか「施設が潰れて自殺したオーナーの怨霊がさまよっている」とか、無数に噂話があった。

親世代はよく遊びにいってたらしいけど、俺らが生まれた頃には既に廃墟になっていて心霊スポットとして地元では有名だったし、小学生のころから実際に何度か行ったこともあった。

帰宅部だった俺、A、B、Cでいつものセブンの駐車場でいつもの4人で駄弁っているときに、Bが「今度●●センターの管理棟いこうよ」と言い出した。
Bは親父さんから噂を吹き込まれたらしかった。Bの親父さん曰く、ゲートを入った正面の子供用観覧車の裏に管理棟のプレハブがあって、そこに自殺したオーナーの霊が出るらしい。

Aは「じゃあ今いっちゃおうよ」と乗り気で、僕とCも別にやることはないので合意。確かその時点で18時前くらいで、暗くなるまでそのままコンビニで時間をつぶしてすぐに出発した。中型免許を持っているAはHONDAのスーパーフォアで、俺含め他の3人は原付。夜になっていくこの時間は目が慣れなくて走りづらい。

●●センターのある小高い山が近づいてくると、不気味さと懐かしさが同居した妙な気分になった。

この小高い山全体が一応●●センターの敷地になっていて、森の中に作られた一本道だけが頂上の遊園地入口まで続いている。

小高い山のふもと、一本道の入り口まで着くと、Aを先頭にぞろぞろと4台のバイクを停めた。道路の入り口は錆びたフェンスで塞がれて、生い茂った木々がフェンスを両端から飲み込みかけていた。フェンスの中央にはA4サイズくらいの白い看板があって、黒ペンキの字で「立入禁止 平成●●年●月改修予定」と書かれていた。

A「バイクでいけないの?」
B「無理だろ。キックボードならいけたけど」
確かに小学生の頃はキックボードか自転車で来ていて、フェンスの隙間や上を通して突破できていた。
Cは「もうここ停めて歩きで良いっしょ」と言って、俺らは全員バイクから降りた。ライトなしで一応周りが見える程度で、辺りはすでにだいぶ暗くなっていた。

B「過ぎてんじゃんこれ」
平成??年?月改修予定という風に書かれていたが、その日付はとっくに過ぎていた。
C「……これ、最近書き直してる」
僕「マジじゃん」
確かに、立入禁止の”立”という字の最後の1画(横棒)だけやけに艶があって新しかった。看板の板は古いのに、字は一文字も掠れていない。
「改修はしてないくせに笑」とAは馬鹿にしていた。

フェンスを乗り越えて、一本道を進む。アスファルトの舗装はひび割れ、脇には大量の落ち葉が吹き溜まっていて、放置された年月をそれなりに感じるものの、もったいないと思うくらいにはまともな道路だった。ここを登った先にはだだっ広い駐車場があって、駐車場に隣接してゲートがある。友達と忍び込んでは、昼間なのにドキドキしていた小学生の頃の記憶が浮かぶ。

しばらく進むと、一本道の脇に細い林道の入り口が現れた。
そのとき先頭を歩いていたCが、その森の中の道に進もうとする。
A「こっちだろどう考えても」
C「別にいいじゃん、こっちも見てみようよ」
B「管理棟いって何も無かったらそっちいこうよ」
C「まだ6時でしょ」
まだ夜も浅いし時間ならいくらでもあるので、林道を進んでみることにした。舗装道路と違って、真上まで木で覆われているのでかなり暗い。とはいえオフロードバイクで来たら楽しそうな細い林道で、道は細いけどそれなりに踏み固められた形跡はある。

A「なにこれ?」
林道に15mくらい入ったところで、Aが麻雀牌くらいの大きさの木の札を拾った。うっすら濡れた木札には、マジックペンで「縁」という漢字が書かれていた。マッキーみたいなペンだと思うけど、書道の字みたいに達筆だった。

A「縁って何?」
B「将棋的なこと?」
僕「他にもないの?」
なんとなく下に視線をやると、
「うわっ!!!!!!!!!!!」とAが急に叫んだ。

僕とBは心臓が止まりそうになりながら「なんだよお前、」と同時にAを見た。

A「いやこれ、全部…」

俺たちの足元、落ち葉の下にはおびただしい数の木札が散らばっていた。
枝とか小石と思って踏んでいた足元の異物感をはっきり認識して、ゾッと冷たい、いやな感触が背筋を登ってくるのを感じた。
B「マジで何…?」
気味の悪さで一気に静かになった空気の中、落ち葉を足でどかすとそれらははっきりと見えてきた。

ちょうど麻雀牌か将棋の駒のようなサイズの正方形の木片が無数に落ちている。その一つ一つに妙に達筆な字で漢字が書かれている。「縁」「矛」「契」「男」「和」「結」、その他にも無数の札が落ちている。とにかく「縁」が大量にある。そして、駒に交じって茶色(元は白?)の紐と赤い紐。

「もういいからさっさと管理棟覗いて帰ろうぜ」
Bは焦って、戻るように言った。

C「こっちだよ」
妙に落ち着いて、何かを確信しているような言い方。
Cは林道の脇の茂みをかき分けて登り始めた。

Aが「おいお前どこいくんだよ!」と声をかけるが、Cは振り向きもせず藪を登っていく。

「ここだよ」
とだけCは言った。
A「お前来たことあんの?」
俺「普通に入り口からいこうって」
B「もういいって、戻ればいいじゃん」
3人で止めても、Cはまったく気にも留めないような素振りでただ登っていく。

勝手な行動にイラついたのもあって、Cを連れ戻そうと俺も藪に数歩入ると、林道からは見えなかったが実は獣道のように踏み固められており、人が一人登っていけるようになっていた。

俺「マジで来たことあったの?」
Cは一切の返事もよこさず、淡々と登っていく。

俺「ねえこいつマジでやばいかも、ちょっと来て」
するする登っていくCを、俺、A、Bで追いかける。
もうCがおかしくなってるのは感じてたし内心めちゃめちゃビビりながら斜面を追いかけるとそこに祠があった。

それを見た瞬間もう完全に背筋が凍って恐怖で吐きそうになって声も出なかった。
Cがこんな変な林道に来たことあるわけないし、獣道を知ってたわけがないのはわかっていた。

「おい何だよこれ」
俺ら3人がほぼ同時に声をあげた。

祠の前面には例の木札が大量に積まれていて、足元には木札としわくちゃの紙、ラブホのマッチ箱とコンドームが大量に散乱していた。霊とか呪いとかポイ捨てとか青姦とか不法投棄とか、わけもわからないまま色んなことが頭をよぎる。

A「これ以上何もないって。行こう」
B「帰ろうマジで」

Cは返事をしないで祠を見ている。木札の山をどかすと祠の戸が見えた。

俺「C、戻ろう!! な!?」
「……ここだよ。」とCが言った。

本当にわけがわからない。
Cが祠の戸に手をかける。

A「やめとけってマジで!!」
B「おい!!!!!!」
口々に止める中、Cは平然と戸を開ける。中には漆塗り?みたいな箱が入っていた。

A「マジでやめろって!!」
Cはすぐに箱を手に取り、開けてしまった。

中に入っていたのは白い紙だった。しっかりとは読めなかったが、黒い大きな字で何文字か書いてある。パッと目をやった瞬間、視界がぐにゃりと歪んで、目の奥の強烈な頭痛と吐き気で座り込んでしまった。

A「おい大丈夫か!!!」
Aが体を支えてくれた。Aは見なかったらしい。Bは少し見てしまったのか、俺と同じように片目を押さえて膝をついていた。

A「おいC!!!!!!」
Cは紙を持ったまま、黙って見つめている。
俺「…なんだよこれ!!」
Cは紙を箱にしまい、正座した。

俺「おい!!!!!」
Cを揺さぶると、Cは全身の筋肉にガチガチに力が入って硬直していた。イメージしていなかった感触にゾクッとして思わず手を放してしまった。
俺「おい!!!!!大丈夫か!!!!」
声をかけても、Cは大きく目をひん剥いたままヨダレを垂らして「ヒ…ヒョ…」「ヒ…ヒョ…」と繰り返すだけだった。

俺とAはもうパニックになったままCを揺さぶって呼びかける。Bも一緒になってCに呼びかけるが、Bはダメージが大きかったのか頭を押さえたまま。Cは変わらず「ヒ、ヒョー…」と訳わかんないことを言いながら目をガン開きにしている。腰が反り返って異様に姿勢のいい正座みたいな形で固まって、どんどん力が強くなる。

A「とりあえず救急車だろ!!!!!」
俺「俺救急車呼ぶ!」
Cは正座の形に固まったまま仰向けに倒れている。救急車が正解なのかはわかんないけど、俺らもパニックで、とにかくただごとじゃないことだけわかっていた。

急いで119番に掛ける。
俺「場所なんて言う? 」
B「やべ、フェンス……鍵、南京錠だったよな」
一本道の入り口にはフェンスがあり、救急車は入ってこれない。
●●センターの中の道の途中です、と場所を告げた。呼吸はあるか、意識はあるか、と聞かれた。改めてCの様子を見ると呼吸はあるようだ。必死に呼びかけると、

Cは「嫌です!!!」と叫んだ。
A「Cわかるか?何か話せる?」

Cはうなされた様子で何かを必死に言っている。

「嫌です」「毎日は無理です」「おじさんがやればいいじゃないですか」
一瞬だけ、意識が戻ったかのようにはっきり喋ったが、それっきり唸り声をあげるだけになってしまった。

A「鍵は切るしかない。ボルトカッターが家にある。俺取りに行くよ」
Aは立ち上がった。
「俺も行く」と咄嗟に言ってしまった。正直、この状態のCと祠の前に残るのが怖いだけだ。
先に飛び出したAに続いて、俺とBも一本道を走って戻った。Bもたぶん俺と同じ気持ちだった。距離でいうと全力で走って3分くらいだと思う。入口に戻ると、Aはフェンスを一瞬確認し、乗り越えてそのままバイクに乗り走り去った。
救急車に場所を知らせるために誰かはここで待たなきゃいけないし、俺の携帯から通報したので俺が残ることにした。Bも原付で近くの整備屋にボルトカッターを借りにいった。

結局すぐにAが最初に戻ってきた。Aのボルトカッター思いっきり挟むと、割と簡単に南京錠を壊すことができた。。
フェンスは錆び付いていたが、俺とAで必死に押すと少しずつ動く。
車が通れるくらいまで開いたとき、Bの乗った原付と救急車の姿が見えた。
俺とAもバイクに乗り、先導するように一本道をCのところまでのぼっていく。

Cは全裸で正座していた。
全裸のまま腰の反り返った正座で道に座っていた。

救急車にはAが同乗して、少し離れた病院に搬送された。
Cは救急車のベッド?に寝かされてからも正座の姿勢のままで、真っ赤に充血した目を見開いたまま、涙とよだれを垂らして「おじさんが来る」「名前を知っちゃったから」「見ちゃった」「おじさんの代わりにいかなきゃ」「あの女の祠にいかなきゃいけない」と繰り返していた。

それがCと会った最後になった。Cはそのまま不登校になって高校も辞めた。その後、あの山に入っていくCを見たっていう噂も聞いたけど、俺ら3人はすぐに東京の大学に来ちゃってあまり把握できてないし、正直怖くて聞けてない部分もあります。Aが助けようとしてくれた気持ちはわかるんですけど、結局地元に戻ってこない時点で同じです。あいつは救急車を呼んでくれたけど、結局僕のいいたいことはわかってないしだめですよね?僕は書いてあったから名前を知ることができたから毎日やしろにお札をあげられますけども、おふよさんのことは本当にだいじな友だちにしか言いたくないですから。しようがないです。かたかなみっつで書かれればそれでいいですから。なまえをしればいいだけです。ほん

とうは。僕はおやしろにいきたくはないのに、僕はおふよさんのなまえをしってしまったのはおじさんが悪い。おじさんはもうしんでしまっているのに僕に紙を見せてなまえを知らせるずるいおじさんのせいです。

おじさんをゆるさないので僕はいいですよね?。おやしろにいくと母さんがおこる。おこられるのはいやですから。おじさんはしんでしまっているので、いないので、いきてるひとがおふよさんのとこえいきます。[※Bさんの実名]はおふよさんをおばけみたいに言いますけど、かみさまですから、しにますよ。電話でも、しにます。正直いって。おしえてあげますけど、前崎さんがしんだのは、母さんが僕をおしごとにとじこめるから、ぼくがおやしろにいけないからですよ。おしごとの先生はおふよさんをしらないから、そういうことになる。

[※Aさんの実名][※投稿者さんの実名]も、おふよさんのなまえ知りましたよね?、僕がかきましたから。ほんとうは箱の紙にしか書いちやあいけないのですけど、おこられますから。なまえを知ってしまったら、僕が、そちらに行かれますので、おじさんとおなじにいきますから。かみさまのなまえというのは③もじですから。おふよさんをさみしくするのは、おじさんにおこられます。わすれるのは、だめです。